特に状況を苦しくしているのは、時間を経るにしたがって感染の深刻度が増し、我慢しなければならない度合いと期間がだんだんと増え、終わりが見えなくなってきていることです。
さて、ストレスが高まると、小さなことでトラブルが起こります。その「問題」を改善しようとするのが普通だと思いますが、それはうまくいかないとが少なくありません。
例えば、暑がりの夫と、寒がりの妻の間に、「室温に関する合意」は可能かもしれませんが、根本的な解決は不可能ですよね。一般的に人が快適と感じる温度の統計を持ち出しても、エコにはこの温度がいいという論文を持ち出しても、それで暑がりや寒がりが変わるわけではありません。そして、暑がりも寒がりも悪いことでもありません。ただ一緒にいるためには何らかの調整が必要なことではあります。
夫婦の葛藤の多くは突き詰めるとこういう構造をしているので、夫婦間の「問題を(根本的に)解決しよう」とするのではなくて、「葛藤は根本的には解決できない」と考えるほうが現実的です。自分の暑がりも、相手の寒がりも「治す」ことはできないことだからです。であるならば、「違い(問題)がありながら、どうやって一緒にいるか」と考える必要があります。
その一つの方法は、「地理的解決」といわれるものです。
静子さん(仮名、30代後半、育児休暇中)は、仕事で疲れていると言って育児を手伝わない夫の顔を見ると無性に腹が立つので、夫に「私が起きている間は帰ってこないで」と言い渡しました。土日は一人で子どもの世話をするか、家にいないかの「選択権がある」のだそうです。別の正則さん(仮名、40代後半、専門職)夫婦は、毎日一緒にいると喧嘩になるので、週末のみ同居する週末婚にしたところ、喧嘩は少なくなったそうです(ただ、これでいいのかわからないと言ってご相談においでになられたのですが……)。
地理的解決のいいところは、目に見える対策なのでわかりやすいことと、即効性があることです。