夫婦の葛藤の多くは突き詰めると同じ構造をしているという。※写真はイメージです(Getty Images)
夫婦の葛藤の多くは突き詰めると同じ構造をしているという。※写真はイメージです(Getty Images)

 新型コロナウイルス対策で、大人も子どもも家にいる時間が増えている。いつまで続くかわからない状況に不安とストレスを感じ、家庭内のトラブルも起きやすくなっているという。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「ストレス対処法」を解説する。

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 新型コロナウイルス対策で、学校が休校になり、会社もテレワークになるなど、家の中の昼間の人口密度が高くなったご家庭も多いですよね。アメリカのシリコンバレーとか、古くは保険業が始まったロンドンのロイズコーヒーショップなど、都市におけるある種の人口密度の高さは、創造的なブレークスルーを生むことが少なくありませんが、家庭内の人口密度が高いと、その家族のありようがより強く出るようになります。

 どんなに仲が良い夫婦であっても、違う人間が一緒にいることは、ストレスなのは間違いありません。問題は、一緒にいることによる幸福感と、同時に感じるストレスのバランスです。夫婦の長期的関係を維持するには前者が大事ですが、最近は在宅勤務などで顔を突き合わすことが増えることによるストレスについて相談を受けることが増えているので、今回は後者のことを考えてみたいと思います。

 ストレスといえばストレス発散、とまずは思い浮かぶかもしれませんが、発散の一本やりだけでなく、対処する方法をどのくらい持ち合わせているかが重要です。

 ストレスへの対処という観点からすると、我慢して「通り過ぎるのを待つ」のは一つです。ただ、我慢できる期間は、個人差はあるものの、頑張って1週間です。よその家に3日ぐらい泊まってもお客さま扱いで接してもらいやすいですが、1週間以上なら、双方が納得できる秩序を作らないとトラブルが起きやすくなります。

 今回のコロナ禍によって、家で家族と顔を突き合わす時間が増えたのは、これと似ていると思います。1日数時間と土日という前提で「お客さま扱い」が可能だったのが、四六時中一緒にいるとなったらお客さま扱いが困難になります。定年後の夫の「ぬれ落ち葉」問題も同じことなので、今回のことが将来の試金石になるかもしれません。実際、今までより一緒にいる時間が増えてうれしいという夫婦もいるはずですが、在宅勤務が増えてうっとうしく感じる方や、嫌な顔をされた人も多いと聞きます。そのせいか、住宅街の飲み屋やカフェが意外にも盛況になっていることもあるようです。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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