「今回の場合ですと、ウイルスが海外からきているという認識が強く、どうしても国籍や民族で感染リスクを判断しがちです。ある学校では、『中国人の子どもと、我が子を同じ教室で勉強させないでほしい』という相談が保護者から寄せられたそうです。その中国人の子は長く日本に滞在しているわけですから、言うまでもなく感染リスクは日本人の子どもたちと同じはずです」
また、ネットに出回るデマによって差別が助長されるケースもある。16年4月の熊本大地震では、「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」などというデマが一部で拡散された。まるで関東大震災で起きた“朝鮮人虐殺事件”を連想させる悪質な投稿である。
「災害などのあとには『泥棒や性犯罪が横行している』という噂が出回りがち。ですが、実際は多くの警察官が現地に来ることもあり、普段より犯罪認知件数は減る傾向にあります。“体感治安”とでもいいましょうか、一つの犯罪を耳にしただけで不安が増幅されてしまい、あたかも件数が大きく膨れ上がったかのように感じてしまうのです。こういった不安が、未知の存在である外国人などに向けられてしまうことがある。身近にお付き合いをしている外国人がいない人ほど、こうした差別をしがちなのです」(田村さん)
非常時だからこそ、デマや不確かな噂にまどわされないよう、情報収集と冷静な判断が大事になるだろう。
「国・自治体・政治家がコロナ関連の差別にはっきり反対するコメントを出すこと。差別に直面した際は、直接止めるのが難しければ、差別を写真などで記録してNGOに通報することも有効です。差別を『なかったこと』にさせないことが重要なのです」(梁氏)
(AERA dot.編集部/井上啓太)