次には、白隠さんの「生きながらに虚空と一体になれ」という教えです。これは、禅病に陥った弟子たちを内観の法で治した後、語った言葉です。
「長生きしたとしても、いずれ皆、死んでいく。虚空に先立って死なず、虚空に遅れて生まれないというほどの真の仏法の姿をこの身をもってして体現しよう」
つまり、生きながらにして死後の世界(虚空)と一体になれということなのです。これは私にとって、人生の究極の目標になりました。
3番目は白隠さんが広めた「延命十句観音経」です。わずか十句、文字数にして42文字という短いものですが、これを唱えれば願いがかなうというのです。これを知ってから、私は毎朝、唱えています。そうすることで祈りに満ちた心を得ることができました。
最後は白隠さんの逸話です。死ぬ1カ月前に、布教のために疲れ果てた体を40代のふくよかな女性と同衾することで癒やしたというのですが、なんともいい話です。私も死ぬ前には、そういう女性と出会いたいと願うようになりました。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2023年1月6-13日合併号