新型コロナウイルス対策として、国や自治体が様々な施策を行っている。しかしその一方で、在日米軍という“裏口”が開けっ放しになっている実情もある。AERA 2020年4月13日号では、米軍が抱える集団感染のリスクを取材した。
【図を見る】米軍の主な国別駐留人数と新型コロナウイルス感染者数
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新型コロナウイルス感染の世界的拡大に対処するため、政府は1日、米国を含む49カ国・地域を入国拒否の対象に追加、計73カ国・地域に過去2週間以内に滞在した外国人は3日から入国させないことになった。
だが在日米軍に関する地位協定の9条では、米軍人、軍属、その家族は旅券、ビザ、外国人登録などの日本の法令の適用を除外されているから、日本はその入国を拒否できない。
日本には米軍人5万5600人、軍属約5千人、家族約4万5千人がいて、計10万人以上。世界最大の米軍駐留国だ。それらの米国人は東京の横田、沖縄の嘉手納などの米軍飛行場に着き、軍の身分証明書で基地から出る。成田、羽田などの民間空港も身分証明書で通れるし、軍艦で横須賀、佐世保に入る乗組員も多い。
米国の新型ウイルス感染者は2日正午現在で約21万人、死者4700人余。世界一感染者数が多い国に対し、地位協定は米軍専用の「裏口」を開けている形になった。
米兵らが来るのは米本土からとは限らない。米軍の駐留国には多数の感染者が出ている国も含まれる。米国防総省は3月25日、米軍の将兵、文官、家族の海外での移動を60日間停止すると発表した。だが「司令官が任務即応態勢の確保に必要な特例と決定すればこの政策を回避できる」とのただし書き付きだ。
感染者が「裏口」から流れ込むことはないのか。外務省幹部は「地位協定第9条がある以上、米軍人等の入国拒否はできない。米軍も新型コロナウイルスの拡大防止に必死だから、検疫をしっかりやっている」と言う。
だが米海軍横須賀基地では3月26日から28日までに米軍人5名の感染が発表され、うち2人は基地外に住んでいた。嘉手納空軍基地では27、28日に計3人の感染者が出ている。米国防総省は3月29日、米軍人の感染者は568名と発表した。