日本にとってさらに不安なニュースも伝えられている。

 カリフォルニア州サンディエゴを母港とする空母セオドア・ルーズベルト(9万7千トン)は、ベトナムのダナンを訪問後太平洋を航行中、24日に乗員3人が陽性と診断された。その後の検査で感染者が続々と判明、4月1日には93名と発表された。同艦はグアムに緊急入港し、乗員の大半を上陸させる。

 全長317メートルの同艦は客船ダイヤモンド・プリンセス(同290メートル、乗員・乗客計約3700人)とほぼ同等のサイズだが、戦時の乗員は約5800人。約70機を搭載できる格納庫が大きな空間を占めるため、乗組員の大部分は2段ベッドで眠り、ビュッフェ式の食堂も混雑、廊下の幅も狭い。艦橋や戦闘指揮所なども人が多く、最近米国で基準になった「他人との間隔1.8メートル」は実行不可能。感染者が出ると隔離する場所も少ない。

 横須賀が母港の空母ロナルド・レーガンはルーズベルトとほぼ同型だ。昨年11月から横須賀のドックで定期点検・整備中で、4月ごろには完了しそうだ。乗組員約6千人のうちには休暇を取って本国に帰っている者も少なくないとみられ、彼らがどっと日本に来る可能性もある。

 米軍は検査をするだろうが、もし1人でも軽症の感染者が検査に漏れ、日本を母港とする空母や揚陸艦、巡洋艦、駆逐艦に乗ればルーズベルトの二の舞いになり、日本の港に緊急入港、上陸することも起こりうる。

 この問題は海軍だけでなく、濃厚接触を避けがたい海兵隊や空軍も本質的には同様だ。もし在日米軍が巨大クラスター(感染者集団)になれば、同盟関係を揺るがしかねない。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2020年4月13日号

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