2018年11月、米国・ワシントンに拠点を置くシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は、イスラム過激派の動向に関する報告書を公開した。それによると、アルカイダやイスラム国と関連するイスラム過激派は、世界に67組織(9.11時から約1.8倍に増加)存在し、そういった組織に参加する戦闘員は、中東やアフリカ、南アジア、東南アジアなど各地域に合計で10万人~23万人いるとした。国別では、シリアが4万3650人~7万550人と最も多く、アフガニスタンに2万7000人~6万4060人、パキスタンに1万7900人~3万9540人、イラクに1万~1万5000人、ナイジェリアに3450人~6900人、ソマリアに3095人~7240人いるとした。この数字がどこまで合っているかは現時点で不明だが、昨年、米国防総省や国連も同様の見解を示している。
一方、特に昨年以降は、イスラム過激派より白人至上主義者(組織)によるテロの方が目立つ。2019年3月のニュージーランド・クライストチャーチモスク銃乱射テロ事件を皮切りに、同年8月の米国・テキサス州エルパソ銃乱射テロ事件、同年10月のドイツ・ハレユダヤ教施設襲撃テロ事件など、白人至上主義者によるテロ事件が断続的に続いている。
そのようななか、米国のインテリジェンス・セキュリティコンサルティング企業「Soufan Group」は昨年9月、暴力的な白人至上主義に関する論文を発表した。それによると、2014年のウクライナ危機以降、2019年6月までに戦闘や軍事訓練のためウクライナにやってきた白人至上主義者は、世界55カ国あまりから1万7000人を超えるという。そのうちロシアが最大1万5000人と大半を占めるが、ドイツから150人、フランスから65人、イタリアから55人、北米から49人、南米から11人、オセアニアから10人などと各地から戦闘員が集まっている。
Soufan Groupは、数万人の外国人戦闘員がイスラム国に参加するためシリア・イラクに流入したように、SNSやネットで情報を知った白人至上主義者たちが世界中から集まり、暴力的な白人至上主義者のグローバルなネットワークが形成されているとした。