写真はイメージです(Getty Images)
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和田大樹(わだ・だいじゅ)/1982年生まれ。オオコシセキュリティコンサルタンツアドバイザー。清和大学非常勤講師。岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員も兼務。専門分野は国際テロリズム論、国際安全保障論、地政学的リスクなど。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)。著書に『2020年生き残りの戦略 世界はこう動く!』(創成社)、『技術が変える戦争と平和』(共著、芙蓉書房)、『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』(共著、同文館)など
和田大樹(わだ・だいじゅ)/1982年生まれ。オオコシセキュリティコンサルタンツアドバイザー。清和大学非常勤講師。岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員も兼務。専門分野は国際テロリズム論、国際安全保障論、地政学的リスクなど。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)。著書に『2020年生き残りの戦略 世界はこう動く!』(創成社)、『技術が変える戦争と平和』(共著、芙蓉書房)、『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』(共著、同文館)など

 新型コロナウイルスの感染拡大で国際社会が揺れている。政治的な混乱や経済の打撃はテロ活動にも大きな影響を及ぼす可能性が高く、すでにその兆候がみられるという。国際安全保障や国際テロリズム論を専門とする和田大樹氏が、新型コロナウイルスと国際テロ情勢をテーマに論考を寄せた。

【写真とプロフィル】国際テロリズム論が専門の和田氏

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 新型コロナウイルスの感染が各国で猛威を振るうなか、それがテロ組織の拡大に利用される危険性があるとの懸念が、専門家の間で広がっている。例えば、英国の国家対テロ当局は4月22日、イスラム国などのテロ組織が便乗し、病院など新型コロナウイルスが関連する施設を狙ったテロを実行する可能性があると警告した。

テロの脅威にさらされる危険性があるのは英国だけではない。感染拡大で各国政府の新型コロナウイルス対策に市民の不満が高まるなか、テロ組織は“政治的隙”を突いて支持を拡げたい狙いがあるのだ。

 まず、ここ4カ月間の国際情勢を振り返ってみたい。日本では、年末の紅白歌合戦が終わって年が明けた際、多くの人が「さあ、東京五輪だ!」と明るい未来を疑わなかっただろう。しかし、すぐに米国とイランの緊張が高まり、市場関係者らの中東リスクへの懸念が拡大。そして次に飛び込んできたのが、未知のウイルスが中国で流行しているというニュースだ。世界のメディアは当初、中国・武漢で感染症が拡大し、被害者が出ているとは報道したが、あくまでも“局地的”な問題という扱い方だった。

 だが、それは一気に“グローバル”な問題へと変化した。中国で猛威を振るったウイルスは韓国やイラン、さらに欧州や米国へと感染が拡大し、感染者数と犠牲者数は“戦争被害”と思わせるレベルに至っている。

収束への道筋はまだ見えてこないものの、国際政治の世界では、早くもポストコロナ時代の大国間覇権がいかに展開されるかに注目が集まっている。そのひとつは感染源と流行拡大をめぐる“犯人さがし”だろう。

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米国、ドイツ、フランスも中国に懸念