すでに、中国は自らの責任を払拭するかのように、“感染源国”から“国際支援国”へと舵を切った外交を積極的に展開しており、国際社会における中国の影響力を確保することに徹している。

 米政府には武漢の研究施設で人への感染がおきて市内に広がったとうい説があり、トランプ大統領も非難を強めているが、ドイツやメルケル首相やフランスのマクロン大統領も同様に中国への懸念を表明している。今後、米中を中心に大国間の対立や緊張が今まで以上に高まる可能性がある。

また、国際通貨基金(IMF)は4月9日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年の世界経済の成長率が急激なマイナスに転じ、1930年代の世界恐慌以降で最悪の経済危機に直面するとの見通しを示した。既に、その影響は各国で深刻な数字として出始めている。

こういったポストコロナ時代の国際政治や世界経済は大きな問題だけに、今後も世界のメディアで毎日のように報道されることだろう。

 新型コロナウイルスによる大きな影響はそれだけではない。冒頭で述べた通り、筆者が研究する国際テロリズムの領域でも、新型コロナウイルスの感染が各国で猛威を振るうなか、それがテロ組織の拡大に利用される危険性があるとの懸念が専門家の間で広がっている。

 まず、医療体制が脆弱なサハラ地域やアフリカ東部などについての懸念だ。新型コロナウイルスへの対応に政府の時間が割かれることで、軍や警察の対テロ作戦に支障が生じ、それによってイスラム国やアルカイダを支持するイスラム過激派の活動が活発化する可能性が指摘されている。

次に、新型コロナウイルスによって壊滅的な被害が生じている欧米諸国では、移民・難民などへの風当たりが強まることで、ナショナリズムや排外主義の風潮がいっそう高まる可能性がある。暴力的な白人至上主義組織や極右団体が支持拡大にそれを利用する恐れが指摘されているのだ。

 イスラム国というと、日本ではすでに過去の存在というイメージがあるかもしれない。だが、イスラム国の「脅威」は今なお残っている。確かに、イスラム国のシリア・イラクにおける支配領域はなくなった。しかし、生き残った戦闘員は逃亡し続け、アジアや中東、アフリカなど各地ではイスラム国を支持する武装勢力が活動しているのだ。そして、アルカイダも、それを支持する組織を中心に国際的なネットワークを維持している。

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