5月5日、北海道電力泊原子力発電所3号機が停止し、国内全50基の原発が停止した。しかし、これで安心といったわけではなく、福島第一原発4号機の危険性を世界が危惧している。
 米上院エネルギー委員会の有力メンバーの一人、ロン・ワイデン議員は4月6日に福島第一原発を視察。その後、16日付で4号機の原子炉建屋が再び大きな地震や津波に見舞われれば、使用済み燃料プールが崩壊し、「当初の事故より大規模な放射性物質の放出が起こる恐れがある」と警告した。
 さらに、ニュースサイト『ハフィントン・ポスト』は、4号機のプールにある核燃料棒が冷却されずに放射能が放出された場合、そこから出るセシウムの総量は、チェルノブイリ事故で出た量の少なくとも10倍になる、との専門家の分析を紹介した。
 これほどまで国際社会で福島第一原発4号機が注目される理由を、元スイス大使で東海学園大学名誉教授の村田光平氏はこう言う。
「いまや4号機の存在は、北朝鮮のミサイル問題にも劣らぬ、全世界にとっての安全保障上の大問題になっているのです」
 さらに村田氏は今年3月、参院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、「4号機が事故を起こせば、世界の究極の破局の始まりと言える」と警告している。
 東電は4月26日、4号機原子炉建屋の倒壊危険性を否定するリリースを発表。しかし、村田氏が「事故を起こした国や東電の信頼は世界中で地に落ちています。発表をうのみにする国など、どこにもありません」と言うように、米国では福島第一原発の現状と事故の収束に向けて、世界のエキスパートを集め、中立した独立機関としての評価委員会を作る動きがある。
 村田氏は善処を求める書簡を野田佳彦首相にも送った。だが、いまのところ、具体的な動きはない。

※週刊朝日 2012年5月18日号