「もちろん、原作にはそんなシーンは出てこないのですが、そこは鈴木おさむ氏ならではの脚色というか……。以前、鈴木氏は『奪い愛、冬』『奪い愛、夏』という過剰にドロドロしまくった“ドロキュン恋愛ドラマ”を手掛け、ヒットさせました。いま、スマホでドラマを見る視聴者が多くなり、大型画面のテレビと比べるとどうしても集中力が続かなかったり、ながら見が多い。そのため、よりわかりやすくより過剰な作風がウケるということを、鈴木氏は意識しているんだと思います。今回の『M』もスマホ視聴者を取り込むべく、原作のストーリーは生かしつつ、ドロキュン恋愛ドラマの手法を入れ込んだのでしょう。登場人物たちがしきりに『アユ』『アユ』と言いまくるのも、ヒロインを粒立てるという意味では、非常に面白い演出。まず、普通のドラマではなかなかこんなことはできないでしょう」(同)

■原作本をもっと売るための映画化

 外出自粛で在宅時間が長くなっていたため、スマホ視聴者を意識した作りは「見ながらSNSでツッコミまくれるドラマ」としてウケているようだ。ちなみに視聴率は第1話が5.6%、第2話が5.4%、第3話は4.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、同枠でオンエアされてヒットした「おっさんずラブ」と同水準。深夜枠ならばスマッシュヒットといえる仕上がりだ。

 TVウオッチャーの中村裕一氏は、同ドラマの魅力を次のように語る。

「アユ役の安斉かれんは常盤貴子に似た雰囲気を持っており、朴訥な演技で独特の存在感を放っている。本格的演技初挑戦というのも浜崎あゆみのデビュー時とオーバーラップし、むしろプラスに働いていると言えます。ストーリーはフィクションとはいえ、モデルとなった実在の人物がおり、例えばELTが『OTF』、TRFは『USG』というように視聴者はあれこれ想像しながら楽しめる。時代背景的にも、今とは違いミリオンセラー連発だった1990年代から2000年代にかけてのCD全盛期の音楽業界の裏側が懐かしさと共に垣間見えるのも興味深い。マサ役の三浦翔平をはじめ、出演者はきっと心から楽しんで演じていると思います。再開がとても楽しみですね」

 絶好調だった「M」だが、「制作サイドは映画化を狙っている」との声も。ある芸能事務所の関係者は言う。

「原作本は16万部のセールスを記録しましたが、シングル・アルバムの総売り上げ枚数が5000万枚を突破している浜崎あゆみの半生を描いているという意味では、少々物足りない。小説が生まれるきっかけとなった会食にはABEMAの藤田晋さんが同席しており、そこから幻冬舎の見城さんに話が持ち込まれて出版に至ったという経緯もあります。藤田さんも見城さんも原作本を売り伸ばしたいという思いは強い。『M』はテレ朝でオンエアが終わってもABEMAで無料視聴できますし、今後もあらゆる手を使ってドラマを猛プッシュし続けるはず。『おっさんずラブ』のようにバズれば、映画化は既定路線でしょう。コロナ禍なので思うようにはいかない側面も多分にあると思いますが、『16万部のままでは終われない』という思いが彼らにはあるのです」

 気になる4話以降はどんな展開が待っているのか。楽しみでならない。(藤原三星)

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