都内の繁華街から人の姿が消えた。読者世代が昭和の時代から愛し続けた東京の名店を、令和の今こそ応援したい。注文を受けてから鰯をさばく「スズコウ」を紹介。
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蒲田で知る人ぞ知る鈴木3兄弟。長男が洋食、三男が寿司、次男の登志正さんは居酒屋を経営する。
「もともと3人とも、精養軒のコックだったんです。東京オリンピックが終わったすぐ後に、3人で蒲田に洋食屋を構えました。5年後に私が、新しい店を出せる場所を見つけたんです。すぐ近くに洋食屋を2軒出すのもなんだし、じゃあ和食にしようと」(鈴木登志正さん)
当初は和食の職人を雇い、鶏料理を中心にした高級感あふれる割烹だったが、どうにも土地に馴染まなかった。少しずつ値を下げていき、今の店に落ち着いたという。
開店して4~5年後、鰯が安く出回っていたので、使うようになった。これが当たった。
「鰯を料理するのが面白くて、いろいろ工夫したのが良かったんでしょう。鮮度にもこだわり、刺身は注文を受けてからさばきます。一度に下ろせるのは5人前が限界ですね。それ以上だとお客さんに出す前に、味や色が変わりますから」
(取材・文/本誌・菊地武顕)
「スズコウ」大田区蒲田5‐18‐14/営業時間:18:00~23:00L.O./定休日:日
※この時期の営業日・時間については、お店にお問い合わせください
※週刊朝日 2020年5月8日‐15日合併号