「コモンウェルス(旧英連邦)の元首たちとも長い関係があります。今の元首たちは息子みたいなものですね。彼女は決してお飾りではありません。頭が良く、外交文書も全部読むという大変な勤勉さ。超人ですよ。そんな女王を単なるゴシップや王室物語ではなく、現代政治や歴史の中で位置づけてみたかったのです。おそらく彼女は後世『エリザベス・ザ・グレイト』と呼ばれるでしょうね。それだけ偉大な人です」
本の副題は「史上最長・最強のイギリス君主」。エリザベス女王の人生を追ううちに、英国の歴史、欧州の歴史、世界の歴史への興味がむくむくと湧いてくるのを感じる。
「王室や皇室はソフトな外交が可能です。誰だって政治家には会わなくても王室のメンバーが行ったら会わざるを得ないでしょう。王室のありがたさは継続性と安定性です」
翻って我が皇室は。そんなことまで考えさせられる一冊である。
(ライター・千葉望)
■八重洲ブックセンターの川原敏治さんオススメの一冊
『天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点』は、天才たちの思考回路を日常生活にも応用したもの。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
* * *
一流の研究者、思想家のみ参加が許されている、オンラインサロン「エッジ」。そこに集まった研究者たち151人の寄稿文を集めた一冊だ。
多少難解なものもあるものの、笑ってしまうような内容のものもあり、一つひとつの文章は短めで読みやすい。また、物理や数学から、心理学、ビジネス、芸術まで、取り上げられるジャンルも多岐にわたり飽きさせない。いずれの文章も自分がいかに普段偏った考え方にとらわれているかを教えてくれるし、新たな視点や思考法を与えてくれる。
本書の「科学理論を使って妥当な判断をする方法」の中で、物理学者のリサ・ランドールが科学とは何かを問い直しているように、常識を疑い問い直す姿勢は考えさせられる。読後、私たちが知っている世界、見ている事象は世界のほんの一部にすぎないと気づくだろう。
※AERA 2020年5月18日号