AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
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70年近く在位し、「政治的な経験を長く保てる唯一の政治家」とまで評されるエリザベス女王。君塚直隆さんの著書『エリザベス女王 史上最長・最強のイギリス君主』では、イギリス現代史をたどりながら、幾多の試練を乗り越えた女王の人生を描く。著者である君塚さんに、同著に込めた思いを聞いた。
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今年1月、英王室のハリー王子とメーガン妃が突然、王室の主要メンバーから退き、英国と北米を行き来して独自の活動をしたいと発表した。エリザベス女王やチャールズ皇太子にも無断で行われた発表に女王は大いに戸惑い、おそらくは怒ったはずである。だが、女王の対応は完璧だった。孫夫妻の気持ちを尊重しつつ、断固として王族の特権を取り上げ独立するよう計らったのである。
「これからたくさんの公務を担っていこうという時期の発表ですから、それは怒りますよ。女王にはダイアナ妃が事故死した時に冷たい対応をして国民の批判を浴びた経験がありますが、すぐ失敗から学び、危機を脱しました。今回の対応にもそれが生きたと思います」
『ヴィクトリア女王』『ジョージ五世』など、英王室の評伝を手掛けてきた君塚直隆さん(52)も、まだ生きているエリザベス女王の評伝を書くことへのためらいがあったという。それは、まだ読めない史料が多いから。ウィンザー城の王室文書館には歴代の王族や首相たちのさまざまな資料が収められているが、エリザベス女王自身が書いているはずの日記などは死後一定期間を経なければ読むことができない。
1952年、25歳で即位したエリザベス女王。チャーチルなど十数人の首相が仕え、日本の天皇とは昭和・平成・令和3代のつきあい。首相なら吉田茂以降29人が入れ替わった。この本に描かれる70年近い女王としての人生は、まさに現代史そのものである。