新型コロナ感染拡大で、テレワーク可能か不可能かという「分断」が表面化している。コロナ後の社会では階級化の加速が懸念される。社会の歪みを是正するために必要なこと、期待することとは。批評家の東浩紀氏と社会福祉士の藤田孝典氏がオンライン対談した。AERA 2020年5月25日号から。
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──感染拡大によって、社会のあり方も大きく変わった。仕事のオンライン化が急速に進み、テレワークがこのまま社会に根付くかもしれない。今回の感染拡大は、ポスト・コロナの社会に何をもたらすのだろうか。
東浩紀:コロナ後の社会で最も懸念しているのは、テレワークができる人たちとできない人たちの「分断」です。終息後もテレワークでいいじゃないか、いい機会だと言っている人も多いですが、オンライン化できない仕事があることにもっと目を向けなければいけないと思っています。
藤田孝典:電話相談でも、現場に行かなければならない人たちの声をよく聞きます。感染リスクを抱えながら、仕事は放棄できないと働き続けている。ゴミ収集の人にせよ、交通機関の人にせよ、ヘルパーさんにせよ、そういったテレワークをできない人が実質的に社会を回しているんだと強く感じますね。
東:感染症は本来、社会全体でリスクを背負うものなのに、オンラインで仕事ができる人だけが助かって、それ以外の人がリスクを引き受けています。
藤田:テレワークできる人たちが比較的給料も高くて、ブルーカラーと言われたりする我々の生活に不可欠な仕事の方々の給与が低いのも問題ですね。
東:テレワークして、アマゾンで買い物をしてウーバーイーツで食事を頼む。結構便利じゃんと言いますが、配達員はテレワークできない。僕たちが「ステイホーム」できるのは、感染リスクを抱えながら働いている人がいるからこそです。
藤田:そのとおりですね。
東:今から15年くらい前に「クリエイティブ・クラス」という言葉が流行しました。要は知識労働者と呼ばれる人たちですが、テレワークできるのはこのクリエイティブ・クラスに重なります。これまでは給与の格差だったんだけど、それが命の格差にまで広がってしまいました。