藤田:私はコロナがきっかけで、かなり多くの人が生活保護になだれ込んでくると思っています。ただ、生活保護を受けるくらいなら死んだ方がマシだと思っている人も実際大勢いて、社会福祉の脆弱さに改めて愕然としています。

東:ネットカフェに住んでいる人たちの存在が、脆弱な社会福祉の典型例ですよね。本来、彼らが普通の家に住めるように手当てをすべきなのに、行政がすべきことをネットカフェが代替してしまっている。

藤田:ネットカフェにせよ、性産業にせよ、社会福祉よりもそちらの方がポピュラーで、公的なサービスの代わりになってしまっています。社会福祉の意味をもう一度問い直さなければいけません。

東:昔、社会学者の古市憲寿さんが「牛丼やファストフードのチェーンは、日本型の福祉のひとつ」という趣旨の発言をして話題になりましたけど、要はマーケットの中に安く食べられたり泊まれたりする場所があるから何とかなるという楽観論がありました。でも、「低価格疑似福祉」で生活していた人が放りだされる問題が出てきたんですね。

藤田:コロナでネットカフェも飲食店も休業に追い込まれています。今までは福祉政策の穴を民間が埋めてきた格好だけど、それでは対処できなくなった。ネットカフェに頼るのはおかしいんだと発想を変えていかなければいけません。

東:非常に大切な問題提起だと思います。

藤田:社会福祉の穴にせよ、差別にせよ、いま日本社会の悪いものが噴出してきています。これをしっかり議論して、ポスト・コロナの想定を社会全体でしていかなければならないですね。

東:繰り返しになりますが、多様な人がいる社会全体でリスクをシェアする。これが肝であり、ポスト・コロナ社会で最も必要なことではないでしょうか。

(構成/編集部・川口穣)

AERA  2020年5月25日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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