何かと後手に回っている印象の政府の新型コロナ対策だが、専門家によると評価すべき点は意外に多いらしい。しかし今後注目すべきは、その財源をどこから確保するのかという点だ。東日本大震災後には復興のために増税し、その後も国民が“気づきにくい”方法で増税し続けた過去がある。AERA 2020年6月1日号では、政府の新型コロナ対策とその財源について、専門家らに取材した。
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受益の裏側には、必ず負担がある──。
政府は国民一律10万円の定額給付など五つの柱から成る新型コロナウイルス感染症対策の第1次補正予算を成立させた。現在は5月27日をめどに第2次補正予算の編成を急ぐ。
何かと批判の多い政府のコロナ対策予算だが、ニッセイ基礎研究所主任研究員の三原岳さんは「評価すべき部分は意外に多い」という。たとえばコロナにかかった人を受け入れる病院への経営的支援。人工呼吸器が必要な患者が集中治療室(ICU)に入院している場合などに適用される診療報酬額を4月18日から2倍に引き上げた。
「国民健康保険の傷病手当金も、日本の公的医療保険制度の歴史上、画期的な前進です」
勤労者が病気で働けなくなると、大企業の会社員や公務員は自前の公的医療保険を通じ、傷病手当金として月給の約3分の2が支給される。一方、非正規労働者の加入が多い国民健康保険では“保険制度を運営する自治体による任意給付”とされていたが、これまで支給実績がなかった。ところが早々と3月10日に決定した緊急対応策第2弾で、傷病手当金を支給する市町村等への“国による全額支援”が打ち出された。
「かかった方が安心して療養できることは感染防止策にもなります。さらに、働き方の多様化にまったく追い付いていなかった医療保険制度の給付格差を解消する方向へ国が即座に動いた点は、よかった」
緊急事態宣言に伴って、全国で多くの商業施設や飲食店が営業休止や短縮に踏み切った。政府は休業補償をしないという方針を貫く一方、自治体レベルでは「協力金」などの名目で金銭補償の実施が増えている。
コロナ対策に関して動きの鈍い国と迅速な都道府県・市区町村が対比して語られることは多い。東京を除いた大半の自治体は財政に余裕がないのに、独自施策を打てた裏付けは、4月に国が1兆円を追加計上した「地方創生臨時交付金」にある。
「交付金の使い道に関する制約が緩やかだったので、各自治体が地域の実情に応じた施策を展開できました」