甲子園球場 (c)朝日新聞社
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花咲徳栄の長距離砲・井上朋也(左)と、明石商のエース・中森俊介。その雄姿を甲子園で見たかった (c)朝日新聞社

 ウイルスの猛威は球児の夢舞台までものみ込んでしまった。全国4千校近い高校が目指した「夏の甲子園」が中止になり、球児や指導者からは悲痛な声が聞かれる。プロ入りを目指す高校生の進路を不安視する声もある。絶好のアピールの場を失ったまま、秋にはドラフト会議が待つ。

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 この夏、甲子園で球児が白球を追う姿は見られなくなってしまった。全国高校野球選手権大会を主催する朝日新聞社と日本高校野球連盟は5月20日、今夏の第102回全国選手権大会と、代表49校を決める地方大会の中止を発表した。

 新型コロナウイルスの感染拡大は全国の感染者数を見れば終息に向かいつつあった。20日時点で39県の緊急事態宣言が解除されていたが、感染リスクを完全になくすことは難しく、休校措置や部活動の休止による練習不足などで、選手の健康や安全面のリスクも否定できないことから、苦渋の決断がなされた。

 100年を超える歴史の中で、太平洋戦争による中断(1942~45年)を除き、大会の中止は3度目。18年の米騒動による中止、41年の戦局の深刻化による中止に次ぐ79年ぶりで、戦後初めての中止となる。地方大会すら開催されないのは史上初めてだ。今年は春の選抜高校野球大会も中止となっており、球児たちにとってつらく悲しいのはもちろん、高校野球ファンにとっても寂しい結果となった。

 例年、この時期は甲子園で活躍する注目選手に想像を巡らせるファンも多いのではないか。もし開催されていれば、今年はどんな選手の活躍が期待されたのか。「投打ともに粒ぞろい」と指摘するのは、「流しのブルペンキャッチャー」として全国各地のアマチュア選手の取材を続けてきたスポーツライターの安倍昌彦氏。

 投手では、昨秋の明治神宮大会を制した中京大中京(愛知)の高橋宏斗と、昨夏は2年生エースとして4強入りを支えた明石商(兵庫)の中森俊介を挙げる。

「ともに今年の高校野球を代表する右の本格派で、速球は150キロ前後。技術面の完成度も高く、甲子園で見たかったという人も多いのでは」

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