健康診断だけではありません。ユニセフによると、37カ国で1億1700万人もの子どもたちが麻疹の予防接種を予定通り接種できない恐れがあると言います。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、開発途上国ではワクチン接種の取り組みが休止状態に追い込まれているからです。日本でも、小児のワクチン接種率の低下が問題になっています。感染拡大を受け、通院をためらうケースが増えており、すでにワクチン接種で予防可能となっている疾患の感染拡大も懸念されているのです。

 クリニックには、「留学や海外赴任は延期になってしまったものの、渡航に備えて前もってトラベルワクチンを接種しておきたい」という方が多く受診されています。渡航先によって必要なワクチンの種類も接種回数も異なるため、余裕を持って接種計画を立てる必要があります。

 夏以降の入国制限の緩和の検討が始まったという報道がありましたが、まだすぐに渡航が可能になるような状況には残念ながらならなさそうです。「流行が落ち着いたら、海外旅行に行きたい」「留学したい」「海外赴任の予定がある」という方は、ぜひ今のうちに渡航の際に必要なワクチン接種を済ませておかれることをお勧めします。

 さて、治療薬やワクチン開発はもちろんですが、新型コロナウイルスの遺伝情報の解析も進んでいます。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのLucy氏らが7,666の新型コロナウイルスゲノムを解析したところ、なんと新型コロナウイルスの感染流行は2019年10月6日から12月11日のいつかに始まったと推定され、198の変異がすでに発生していることも判明しました。

 また、マウントサイナイ医科大学のAna氏らによる84の異なる新型コロナウイルスゲノムの解析の結果、2月末から急速に感染者が増加したニューヨークでの新型コロナウイルス流行は、主に欧州やアメリカの他の地域からのウイルスが起源であり、恐らく旅行者が運び込んだウイルスである可能性が高いことが推定されました。

 遺伝情報の変容を追うことが、薬やワクチンの開発、そして感染者数や致死率に大きな差を生んでいる謎を解く鍵になるかもしれません。

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