チーム編成だけでなく、ファンサービスなどの多くの面でも変化が見られる。
「世間のニーズにあったものをどんどん取り入れる。東京ドーム最寄りの駅ビルには球団公式グッズショップも誕生。テレビやネットなどにも選手が積極的に登場し情報発信するようになった。プロ、そしてイチ企業としては当然なことだが、それが形となってきた」(前出経済専門誌ライター)
かつては『巨人ブランド』は絶対的だった。対戦カードを問わずドル箱、東京ドームは超満員でチケットはプラチナ化した。地上波視聴率も巨人戦が他番組を抑えて、上位を独占する日々もあった。しかし時代は大きく変化している。
「巨人戦中継する日本テレビは民放視聴率トップにいるが、中心はバラエティやドラマ。数字の取れない巨人戦には当然、広告も集まらない。地上波から消えるのも時代の流れだった。確かに地方の娯楽がない街などでは、いまだ巨人ブランドは健在。しかしプロ野球本拠地も日本各地に広がっており、都市部には野球以外の多くの刺激が溢れている。国内トータルでみれば巨人人気は下がっている」
広告代理店関係者は巨人の現状を見据えた上で、最近の動きに注目する。
「親会社グループがメディア系なのに、外資系配信会社DAZNと契約した。またグッズ収入の重要性に気付き、著名アパレルブランドなどとコラボも始めた。これまでは子供騙しみたいなグッズでも売れていたが、ファンの目もシビアになっている。厳しい時代だからこそ天下の巨人軍が本気でやれば、面白いことがどんどんできるはず」
正しくお金を使えば、それが大きくなって戻ってくる、まさに『まわり銭』の発想。巨人軍という1つの会社、組織の中での経営を本気で考え始めたということ。すべての面での質が向上すれば収益も上がる。選手に投資できる額も増え、チームは強くなりファンも増える。優良企業として至極真っ当なループになりつつある。
日本中が危機に面している昨今、プロ野球界も対岸の火事ではない。今こそしっかりしたビジョンを持った球団経営をしなければ、最悪の事態が訪れる可能性はある。かつてのように『親会社』頼みはもはや通用しない。
巨人が本気になれば大きな山が動く。伝統と歴史に新たなページが加われば、再び黄金時代も訪れるはずだ。