オクラの苗植えの仕事に励む鹿児島市内のホテルの従業員や飲食店オーナーら。農家での副業が人やモノの域内循環につながっている(写真:「ホテル&レジデンス南洲館」代表・橋本龍次郎さん提供)
オクラの苗植えの仕事に励む鹿児島市内のホテルの従業員や飲食店オーナーら。農家での副業が人やモノの域内循環につながっている(写真:「ホテル&レジデンス南洲館」代表・橋本龍次郎さん提供)
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 新型コロナで打撃を受けた会社がある一方で、勢いづく会社もある。コロナ禍のいま、会社間で従業員をシェアすることで雇用を守る「従業員シェア」という考え方が生まれた。その支え合う関係は地域の活性化にも貢献する。AERA 2020年6月22日号の記事を紹介する。

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 従業員シェアは地域資源の循環促進にもつながっている。

 鹿児島市のアーケード街「天文館」。緊急事態宣言の解除後も経済の回復には程遠い現状だが、ホテルや飲食店を経営する橋本龍次郎さん(56)の表情は活力に満ちていた。

「農家の人に新型コロナの影響を聞くと、『私たちは常に自然災害のリスクと向き合ってきた』と言うんです。たくましさを学びました」

 4月の売上高が対前年比7割減、5月が9割減の状況に陥った橋本さんが活路を見いだしたのは地元農家での副業だ。

 きっかけは4月中旬。取引先からオクラの苗植えの仕事を紹介してもらった。数人の従業員と橋本さんも参加。慣れない作業で腰痛や筋肉痛になったが、自然の中で体を動かして働く喜びはなにものにも代え難い。その後もホテルの営業は続けながらほぼ毎週、周辺農家やJAの求人に応じた。橋本さんは休業中の商店街の経営者仲間にも声をかけ、一緒に農作業を続ける。日給は4千~6千円。農業体験は家計援助だけでなく、地域の再発見につながる効果がある、と橋本さんは言う。

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