渋谷駅は、JR東日本、東急電鉄、京王電鉄、東京メトロが集うターミナル。都内有数の繁華街として華やかな反面、工事が相次いでいて乗り換えルートによっては“迷路”になるほどわかりづらいとの声も多い。21世紀に入ってから、京王電鉄井の頭線を除く渋谷駅で抜本的な大改良工事が行われている。中でも埼京線ホームの移転は、開設25年目にして実現した宿願であった。
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■今よりも南側に開設された渋谷駅
JR東日本の渋谷駅は、品川鉄道の駅として1885年3月1日に開業。当時は現在地より約300メートル南側に位置していた。「山ノ手線」(当時)と呼称されるようになったのは1903年で、1909年12月に電化されると、列車は汽車から電車に変わる。こうして山手線は“日本のドル箱路線”として君臨してゆく。
1917年、現在地に移転すると、渋谷の街が大きく発展し、東京市電(後の都電)、玉川電気鉄道、東京横浜電鉄(現・東急電鉄)、帝都電鉄(現・京王電鉄)、東京高速鉄道(現・東京メトロ)が集う東京屈指のターミナルに成長。さらに1934年、正面改札口前に忠犬ハチ公(当時存命)の銅像が建つ。1944年、太平洋戦争に必要な金属物資を回収するため一度撤去されたが、1948年、現在地の駅前広場に再建された。
戦後、山手線は国鉄の駅となり、ホーム幅員の拡大、山手貨物線の配線変更などの改良工事が行われた。
■昭和時代から埼京線の延伸を求めた渋谷区
1985年9月30日、赤羽線、東北本線の別線を組み合わせ、「埼京線」という電車系統名称として池袋~大宮が開業。1986年3月3日から山手貨物線に乗り入れ、新宿まで延伸された。
国鉄分割民営化後、通勤新線渋谷区誘致対策協議会(1981年発足)は、2度にわたり、JR東日本に埼京線渋谷延伸を要望した。実現すれば山手線の混雑緩和につながるほか、渋谷駅周辺地域の開発契機になることを期待したのだ。