通常、信託銀行に遺産の整理手続きを丸ごと委任すると、最低でも100万円以上の手数料がかかる。手続きの対象を絞った“簡易版”なら手数料は30万~50万円程度で済むが、遺産に有価証券が多いと使いづらい面もある。「WEB相続」は基本料金を30万円とし、対象となる金融機関の支店や銘柄が一定数を超えたらその分を上乗せする従量課金体系になっていて、既存の遺産整理サービスに比べ割安な料金で投資家の相続にも柔軟に対応できるのが特徴だ(ただし、遺産の調査は行わず、不動産は自宅不動産1軒のみが対象となる)。

 ちなみにマネックス証券では、取引した株式などを相続した後、換金せずに保有し続ける相続人はおよそ半数にとどまっている(18年春ごろの同社調査による)。矢田代表は「現金のほうが分配しやすいのは確かだが、売却手数料は相続人が負担することになるし、相続時の相場環境が悪ければ手元に残る金額も目減りしてしまう」と注意を促す。

 親から引き継いだのが成長株であれば将来大きな値上がり益を得られる可能性がある。

 さらに、相続した株式を相続発生から3年10カ月以内に売却した場合、取得費にその株式を承継するために支払った相続税を加算して譲渡所得を減らすことができるなど、“そのまま相続する”メリットは少なくない。

 とはいえ、高齢の親が今の運用先を子どもに渡したいと考えるなら、生前に子どもの同意を得ておく必要がある。自分の運用方針などを理解してもらった上で、同じ証券会社に口座を開設しておけば、いざというときの名義変更もスムーズにいく。

 60~80代に特化して資産コンサルティング業務を行う独立系金融アドバイザー(IFA)法人のアンバー・アセット・マネジメント(友田行洋代表取締役)には、高齢の投資家から「株のまま相続になると厄介だから、今のうちに何とかしたい」という相談が寄せられている。

 相続人となる子どもは投資への関心が薄く、そんな子どもに株式を引き継がせるのは迷惑ではないかと考える親が多いという。

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