(週刊朝日2020年7月17日号より)
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親子で家族信託を活用するイメージ (週刊朝日2020年7月17日号より)
親子で家族信託を活用するイメージ (週刊朝日2020年7月17日号より)

 コロナショック後、日本の株式市場には若い投資家が目立つようになったが、個人投資家の主役はやはり高齢者。70~80代でバリバリ投資を行う一方、将来の相続に備えて持ち株をどうすべきか悩んでいる人が多いという。そこで最新のサービスなどから、高齢投資家の有効な相続対策を探った。

【イラスト解説】親子での家族信託の仕組みとは?

 都内在住の30代女性は4人きょうだいの末子。大手メーカーに勤務していた父親は女性が物心ついたころにはすでに相当額の株式を取引していて、興が乗ると幼い娘に投資の指南をすることもあった。

 2011年の秋、その父親が心疾患で急逝した。半年前に定年を迎えたばかりだった。当時は日経平均株価が1万円を割っており、持ち株は塩漬け状態。女性やすぐ上の姉はまだ学生だったこともあり、母親は「退職金まで注ぎ込んで、こんなクズ株ばかり残して……」と嘆き、一つ残さず売り払ってしまった。以来、女性の家では株式の話はご法度となった。

 しかし今春、在宅勤務が増えた女性の夫がこづかい稼ぎに株式投資を始め、興味半分で取引画面をのぞいた女性は衝撃を受けた。父親の相続の際に二束三文で売却した銘柄が、軒並み倍以上の価格で売買されていたからだ。

「あのとき売らないで、そのまま持っていたら……」

 日本では年々個人投資家の高齢化が進んでおり、金融庁の予測では、35年には有価証券保有者の半数を70歳以上が占めるようになるという。そのころには、65歳以上の認知症患者の割合も最大で3人に1人に上る可能性がある。家族に先の女性のような後悔をさせないためには、相続が視野に入る年齢になったら、万一のとき、自分の資産を誰にどのような形で引き継ぐのか、道筋を付けておく必要がある。

 こうした状況を見越してか、近年、証券会社やその系列会社で高齢者向けの相続や信託のサービス参入が相次いでいる。この4月からインターネット上で遺産の整理手続きを代行する「WEB(ウェブ)相続」を始めたのが、マネックスグループのマネックスSP信託(矢田祐基代表取締役)だ。

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