米ニューヨーク大のグループが行った最大規模の研究では、ARBやACE阻害剤は、他の降圧剤(カルシウム拮抗[きっこう]剤、β遮断剤、利尿剤)と比較して、コロナの感染や重症化を増加させていなかったと結論づけた。だが、浜医師はこう説明する。

「この研究データを詳しく検討しました。高血圧の人の割合を見ると、PCR検査の陰性者が6700人中1784人(26.6%)、陽性者が5894人中2573人(43.7%)、重症者は1002人中634人(63.3%)でした。高血圧の人はコロナにかかりやすく、重症化しやすいという結果です。高血圧の症状そのもののせいもあるのでしょうが、どの降圧剤でも種類によらず感染しやすく、重症化する割合を高めている可能性があります。なかでも、カルシウム拮抗剤は他の降圧剤に比べて重症化を約3割高め、統計学的に有意でした。一方、β遮断剤と利尿剤は、カルシウム拮抗剤に比べてコロナにかかりにくかったのです。この研究は、それぞれの降圧剤の相対的な危険度を調べたものなので、個別の降圧剤の害が目立たなかったようです」

 重症化を起こしやすいとされるカルシウム拮抗剤は、血管の筋肉へのカルシウムの出入りを抑制することで、血管の収縮を緩めて血圧を下げる。浜医師が続ける。

「全身のほとんどの細胞は、正常に働くためにカルシウムの出入りが必要です。これを抑制すると免疫細胞まで働かなくなり、感染症を重症化させます。降圧剤でも、ARBは免疫抑制作用がありますが、ACE阻害剤のほうは免疫への影響は少なく、比較的安心です」

 ただし、降圧剤を急にやめると、血圧が一気に上昇することがある。医師と相談しながら少しずつ減らす方法を探りたい。

 糖尿病(2型)の薬も、免疫機能を下げる薬が多く、コロナへの感染リスクが高まるので検証が必要だ。日本糖尿病学会が推奨しているヘモグロビンA1cの正常値は6%未満とされている。だが、浜医師によれば7~8%の範囲で緩くコントロールすべきで、高齢者は8%台でもいいという。血糖値を下げる薬には、古くから使われているスルホニル尿素剤(SU剤)や、膵臓(すいぞう)からインスリンの分泌を促すインクレチン関連剤(DPP‐4阻害剤、GLP‐1受容体作動剤など)という新しい薬がある。

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