高齢になれば生活習慣病の薬を飲んでいる人も多い。だが、その薬の中には免疫力を低下させるものもある。新型コロナウイルス感染症は、約8割が軽症で自然に治るが、免疫力が弱い高齢者や持病がある人は重症化するリスクが高い。どんな薬が危険なのか、専門家に聞いた。
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持病を放置してはならないが、本来なら薬が不要な健康な人まで飲まされていることも少なくない。血圧やコレステロールが「基準値」より高いと診断されると、降圧剤やコレステロール低下剤を処方されるからだ。薬には副作用があり、別の疾病を引き起こすこともある。
NPO法人「医薬ビジランスセンター(薬のチェック)」(大阪市)の理事長で内科医の浜六郎医師がこう指摘する。
「いま飲んでいる薬が本当に必要かどうか、この機会にチェックするべきです。次の新型コロナ(以下、コロナ)の流行期に備え、感染症にかかっても重症化しないように薬を減らしたり、変えたりすることを検討してみてください。ただし、降圧剤や睡眠剤、抗うつ剤、ステロイド剤など急にやめると危険な薬があるので注意が必要です」
血圧の薬は、「正常範囲」が厳しすぎるとの指摘が出ている。日本高血圧学会は正常血圧の範囲を、収縮期120mmHg/拡張期80mmHg未満とし、140/90以上だと高血圧と診断される。全国では約4300万人が該当するという。
浜医師が説明する。
「ストレスで血圧は上がります。また、高齢で血管が硬くなると、血圧を上げることで組織が酸素不足や栄養不足に陥らないようにしているのです。下げすぎはかえって危険です。英国の国立医療技術評価機構(NICE)などの指針では、160/100未満の人は血圧を下げても予後がよくなるという証拠がないので、降圧剤は勧めていません」
コロナとの関連でいえば、当初から高血圧が重症化の要因とされ、ある種の降圧剤の関与が指摘された。コロナは肺や消化管ほか全身の組織にあるACE2という酵素に結合して、ヒトの細胞内に入り込む。降圧剤のARBとACE阻害剤は、このACE2を増やしてコロナに感染しやすくなる可能性があるというのだ。