コロナ禍では、イレギュラーな予定の調整や子どもたちの体調管理や予防といった、明確化できない家事・育児も増えた。お互いにコミュニケーションを取らないと、「私ばかり……」という不満がたまる。
夫婦の片方だけが在宅勤務のケースでは特に、「在宅になった私にだけ家事負担がのしかかった」(大学教員、45)など、在宅しているほうに負担が偏るという声も多く聞かれた。
家事シェア専門家の三木智有さんはこう指摘する。
「在宅しているほうが家事をやるべきという呪縛は、テレワークだけでなく、妻だけが育児休業を取得した家庭でもよくみられる現象です。まずは夫婦双方がこの意識を変えていく必要があります」
三木さんはまず、「仕事も家事も完璧に」「相手にも同レベルを要求」という意識を捨てることを提案する。家にいるからこそ、いつもより家事を完璧にしなければと思いがちだが、どこでも仕事をしていることには変わりない。通勤していた時間は家事に充てるなど、メリハリをつけるのが重要だという。三木さんの家庭では、どこで仕事をしていようと平日の9時から18時までは家事はしないし、相手にも期待しないというルールを設けているという。
「仕事が終わらないのに家事をこなした実績を作ってしまうと、パートナーにもできるんだと誤解されて、悪循環に陥ってしまいます」
今回の取材では、コロナ禍での家事分担に不満を抱いたり、分担を見直したいと考えていたりする人が多かったのに、実際に夫婦で話し合ったというケースはほとんどみられなかった。
そこで活用してほしいのが、「コロナ禍テレワーク版共働きの家事育児100タスク表」だ。100のタスクについて夫婦で話し合い、どの割合で分担しているかをシールなどで色分けし、見える化するのだ。タスクは家庭によって書き換えてもOKだ。
三木さんはこう話す。
「在宅時間が長くなるとパートナーが家事をする姿が見えやすい。長い間、役割が固定化されていた夫婦でも、改めて話し合ういいきっかけになるはずです」
(ライター・森田悦子)
※AERA 2020年7月27日号より抜粋