東京・築地本願寺においても、オンライン化に際して「直接お参りしてくれる人が少なくなるのではないか」といった懸念もあったという。しかしそれでも、寺は社会状況の変化に適応していくことが大切だと、同寺の副宗務長、東森尚人さん(51)は話す。

「仏教の教えは変わらなくても、その伝え方や手法は伝統だけにしがみついていてはダメでしょう。いま、私たち僧侶一人ひとりの資質が問われていると思っています。小さなパソコンの画面を通じてお互いの気持ちが一点集中できる、オンラインならではの良さもあるように思います。選択肢の一つとして、コロナが終息しても続けていきたい」

 墓参りや葬儀をオンラインでする動きもある。大分県本県にまたがる金剛宝寺。2017年からオンラインを使った「お墓参り代行サービス」とオンライン法要を始めた。きっかけは16年の熊本地震だったと、住職の井上仁勝さん(42)は話す。

「お墓を建て替えたいという方々が増え、地震にも強く背の低いタイプのものを販売したところ、比較的割安だったこともあり福岡県など遠方の方にも購入していただきました。一方で、『遠くてお墓参りに行けない』という問題が出てきた」

 そこで、墓参りを代行する様子を録画し、DVDなどで送るサービスを始めた。いまは墓参り代行には年間で10件ほど、オンライン法要には月に2件ほどの申し込みがあるという。

 この4月からはこれに「オンライン葬儀」も加わり、すでに5件実施している。

 利用者は通夜をせず火葬をする「直葬」をしたうえで、遺骨を郵送で金剛宝寺に送る。同寺では利用者の希望日に本堂で葬儀を行い、その様子をユーチューブで見られるようにした。その日のうちに同寺の敷地内のお墓に納骨もできる。葬儀社を介さないことで、費用も安く抑えられるという。

「ご遺体があるとどうしても、急いで葬儀をやらなければという気持ちになってしまい、葬儀会社の『特急料金』として代金にのることになる。火葬を済ませてからご遺骨を送っていただくことで、経済的負担も減らせるんです」

 さらに井上さんが利点として挙げるのは、気軽に参加できることだ。遠方で参加が難しい、高齢や病気のために参列が困難という人も、オンラインという選択肢があれば参加しやすい。

「葬儀のすべてをオンラインで済ませるのではなく、実際の葬儀にオンラインの要素をプラスしたんです。コロナ禍で大勢が集まる葬儀が難しい今、ぜひ活用していただきたいですね」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年8月10日-17日合併号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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