「やばい、無理かも…」

 この企画を提案した過去の自分が恨めしい。開始早々にして「棄権」が記者の頭をよぎる。不安を払拭できないまま、勢いで再びクライムミルにのった。

 午後1時、死に物狂いで10000段に到達。高さにして約2029メートルだが、周りを見渡しても景色は変わらない。今回の挑戦で一番つらかったのが、いくら昇っても「同じ景色」だということだった。

 ここで昼休憩をとろう。だが、ゆっくり食事をする時間すら惜しい。さくっと食べられて、かつ高カロリーなものを食べようと、近くの牛丼チェーンで20分ほどの食事を済ませる。

 コンビニで買いこんだスポーツドリンク・水(それぞれ2リットル)に、バナナや栄養補助食品を詰めこんだ大きなビニール袋を側に置いて、午後1時半ごろ、再スタート。午前中は1時間ほど昇り続けられたが、午後は疲労がたまり、小刻みに休憩しないと息が続かない。40分、30分と一回の登山時間が短くなるのとは対照的に、休憩時間は10分、20分と長くなっていく。休憩時は、「また昇らなければいけないのか」「もうやめようかな」という葛藤との戦い。この時すでに、油断するとふくらはぎや太ももをつりそうになった。

 午後6時、ようやく20000段に到達。高さにして約4059メートルまできた。富士山(3776メートル、クライムミル換算で18606段)ならもう登頂している計算だ。ここまでの所要時間は、休憩を含めて約9時間半だ。

「なんで目標を富士山にしなかったんだろう……」

 喜びよりも悔やむ気持ちが勝ってしまった。このころになると、他の利用者たちからの視線を感じ始める。おそらく、「この人いつまで階段を昇っているんだ?」と不思議に思ったに違いない。

 午後7時ごろになると、ジムの利用者が増え始める。仕事終わりにトレーニングをする人が多いのだろう。この時間で夕食をとることに。

 近くの飲食店で「唐揚げ定食」を注文する。これだけ疲れていても、こってりしたものを食べられるのは、まだ記者に“若さ”が残っている証拠だろうか。いつもなら「また太る」という罪悪感も、この日ばかりは皆無。どんなに食べても、「摂取カロリーが消費カロリーを超えることはないだろう」という変な自信があった。

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記者を奮い立たせた「サライ」