現在のNERVの“声”は、日本語だけにとどまらない。昨年3月、NERVの英語版のTwitterアカウント(@EN_NERV)を開設。英語版開設のきっかけは、18年9月に北海道を襲った地震。新千歳空港にも影響が及び、道内を訪れていた外国人旅行者には津波の有無や公共交通機関などの情報が入らず、「異国」で不安な時間を過ごしていた。

 エヴァは、Netflixで約190カ国に配信されており、海外でも広く認知されている。そうした知名度も手伝って、開設から1年半が経つ現在は、約7千人の外国人が英語版をフォロー。彼らに向け、日本語版と同時刻に貴重な災害情報を発信している。

「来年の東京五輪までに、アプリの英語版も間に合わせたいです」(同)

 さらに、Twitter版から派生して、独自に進化を遂げたのがアプリだ。2019年9月に防災アプリとして「特務機関NERV」を公開すると、約1年で88万ダウンロードを突破する勢いを見せている。

「Twitterはシステム上、全国一律で情報を届けることになりますが、アプリであれば、現在地や登録地点に基づいて、必要な情報をピンポイントで提示できる」(同)

 開発当時、防災アプリの分野では、すでにNHKやヤフーなど大手企業のアプリが浸透しており、石森さんは後発として参入することには積極的になれなかった。そのため、「試しに作ってみよう」という感覚だったという。

 実は、プロトタイプが出来上がった時点では、アプリ版にはNERVの名前を冠するつもりもなかった。

「ただでさえTwitterで名前を使わせてもらっているのに、アプリまでNERVを拝借するのは申し訳ないという思いがあった」(同)

 ところが、開発の話を知ったエヴァ側(エヴァンゲリオンシリーズの著作権を管理するグラウンドワークス)が好意で「NERVの名前を使っていいよ」と持ちかけてくれたという。

「エヴァの看板を背負った以上は、変なものを作れない!」

 ここでスイッチが入った石森さん。気象庁が募っていた防災アプリの協力事業者として手を挙げ、共同で開発。同庁から、一定の基準を満たした事業者のみが認定される「予報業務許可事業者」のお墨付きをもらい、震度を独自に予想した緊急地震速報を発表できるように。さらに、同社が開発した「独自のシステム」によって、「国内最速レベルの配信」を実現した。

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「第3新東京市」と防災協定?!ファンの心くすぐる