101万人のフォロワーがいるアカウント「特務機関NERV」。本家も認めている
101万人のフォロワーがいるアカウント「特務機関NERV」。本家も認めている
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 災害大国日本で、気象情報や地震情報などの発信を続けるTwitterアカウント「特務機関NERV」が独自の存在感を示している。NERV(ネルフ)とは、人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズ(以下、エヴァ)に登場する組織の名称。ファンが個人的に作ったアカウントが始まりだが、今やフォロワーは101万人。さらに、防災アプリとしても進化し、本家も名前の使用を認めているという。

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「このアプリのおかげで、家族が土砂災害に巻き込まれるのを未然に防ぐことができました」

 アプリ版NERVのユーザーからつい最近、こんなメッセージが届いた。このアプリを開発したのは、NERVのTwitterアカウントを運営しているITセキュリティ会社ゲヒルン。同社代表の石森大貴さん(30)は、「火山や河川の情報に弱い点など、まだまだ強化したい機能がたくさんある」と力強く語った。

 そもそもの始まりは、石森さんのエヴァ好きが高じて10年前に開設されたTwitterアカウント。当初はプライベートのアカウントで、フォロワーは約300人。そこから、情報の正確さと速さでフォロワーを増やし、2年前には「謎の災害速報アカウント」として、AERA本誌が紹介した。当時で約50万人のフォロワーがいた。特に宣伝活動は行ってこなかったというが、メディアや口コミの効果で自然と認知度が高まっていき、2020年9月現在、101万人のフォロワーがつくまでに急成長を遂げた。

「おかげさまで、より多くの方に知ってもらえるようになりました」(石森さん)

 フォロワーが増えた背景には、「災害大国・日本」という喜べない事情もある。皮肉にも、2018年の大阪北部地震や北海道胆振(いぶり)東部地震など、大きな災害が列島を襲うたびにNERVの発信は拡散され、フォロワーが2~3万人ずつ増えていったという。初期にフォロワーを大きく伸ばす一つのきっかけも、東日本大震災だった。石森さんは、被災地の宮城県石巻市の出身。「次の災害が起こったときには、誰も亡くしたくない」と石森さん自身、震災を機に防災に対する意識が大きく変化したという。

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