別れの時が近づくにつれ、シャンシャンの観覧は210分待ちに
別れの時が近づくにつれ、シャンシャンの観覧は210分待ちに
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 2017年の誕生以来、日本中から愛されてきたジャイアントパンダのシャンシャン。中国への返還を前に、上野動物園教育普及課長・大橋直哉さんがその歩みを振り返った。AERA2023年2月6日号の記事を紹介する。

【写真】初公開時にシンシンに引きずられるシャンシャン

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 シャンシャンの誕生以前に、生まれた赤ちゃんがすぐ死んでしまうということがありました。それだけにシャンシャンには、なんとか無事に育ってほしい、前回のような悲劇は繰り返さないぞという思いがひと際強くありました。

 2月21日に中国へ返還となりますが、連日たくさんのお客様がシャンシャンに会いにきてくださっています。現在は抽選制となりましたが、それまではシャンシャンをご覧いただくために210分待ちというような状況が続いていました。お客様にとっても、シャンシャンの成長を見守ってきたという思いが強いのかなと思います。シャンシャンは上野動物園において自然繁殖で生まれた初めてのジャイアントパンダでもあり、上野動物園のパンダの歴史の中でも非常に重要な個体でした。

初公開時に、シンシンに引きずられるシャンシャン。その姿に「かわいい」という声があがった
初公開時に、シンシンに引きずられるシャンシャン。その姿に「かわいい」という声があがった

■健康で穏やかな性格

 シャンシャンはどんな子ですかと聞かれるのですが、一言でいうなら穏やかな性格だと思います。部屋の中のアクリルパネルをかじって壊してしまったというような、いたずらややんちゃなこともしたことはありましたが、病気もほとんどしませんでしたし、そういう意味でも特に手がかかるということはありませんでした。これまで上野動物園で飼育していたパンダを見ている限り、パンダそのものはみんな比較的穏やかな性質だと思うのですが、2003年に来園したシュアンシュアンはめずらしく比較的アグレッシブだったんですね。シュアンシュアンにいろんなものを壊されたというような話も聞いています。そういう意味では、シャンシャンは幼いころにちょっとやんちゃなところがあったくらいで、成長してからは穏やかな性格だったと言えると思います。

 22年7月に、上野動物園の東園から西園の「パンダのもり」へ移動した際は、慣れない施設に落ち着かない様子も見られました。少し食が細くなり体重が減りましたが、それも想定の範囲内だと思っています。どんな動物でもすまいが変われば一時的に落ち着きをなくすことはありますよね。現在、シャンシャンの体重はマックスまではいかないまでも、許容範囲の体重に戻っていますから、そんなに心配することもないと思います。

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