まずは場所から。明治維新期に廃藩置県(1871年)で「栃木県」と「宇都宮県」の二つに制定された数年後に両県は合併し、ほぼ現在の形になった。以降、東の茨城県、西の群馬県に挟まれ北関東で“不動のセンター”に位置するのが栃木県だ。
センターといえば、あのAKB48でセンターを張った大島優子や俳優の山口智子も栃木県出身。タレントの紗栄子も那須への移住で話題を呼んだ。かつては出身芸能人が少なかったが、つぶやきシローやU字工事などのお笑い芸人が県をネタに事実上のスピーカーとなった。県民性などを取り上げるテレビ番組では北関東3県がよく競わされるが、以前はキャラも弁も立つ井森美幸や中山秀征といった群馬県出身勢がアピールでは一枚も二枚も上手だった。が、栃木も先のU字工事や森三中・大島美幸らが強力な存在となって魅力をアピール。お茶の間に栃木県を浸透させた。
海はなくても水は豊富
県内の名所も、挙げ始めたらきりがない。
世界遺産に認定され、かの徳川家康公をまつる荘厳無比の日光東照宮は、修学旅行の定番。御用邸があり広大な自然を堪能できる那須ともども、紅葉シーズンには観光名所として人と車でごった返す。「裏那須」とも呼ばれる県北部の黒磯はおしゃれなカフェが立ち並ぶ注目のスポットだ。「海がない県」と揶揄されることもあるが、鬼怒川や那珂川など大きな川や支流にも恵まれ、ラフティングなどの水レジャーも充実している。
食文化も豊富だ。言わずもがな「餃子のまち」として知られる宇都宮は、浜松や宮崎などとの激戦を繰り広げながらもぎょうざ購入額で常に上位に。県の特産のにらを使って、JR宇都宮駅に降り立つや、香ばしい焼き餃子の匂いを感じ取れるほど、市内には専門店がそこかしこに並ぶ。「とちおとめ」で知られるいちごに至っては、収穫量で52年間ぶっちぎりの1位をキープ。県南西部には、佐野のラーメンや足利のポテト入り焼きそばといった麺ラバーの期待にも熱くこたえている。
栃木の魅力はあまた浮かび上がるのに、なぜ──。
「栃木」の文字がない
「栃木の魅力度が低いのには理由があります。全国の市区町村別に見ると、日光は13位。本来なら、栃木も13位以上でいい。なのに日光や他の県内の魅力を使い切れていないんです」
田中社長はそう言うと、栃木県の観光地に並ぶ菓子をおもむろに取り出した。