まんじゅうの起源には二つの説がある。一つは仏教、もう一つは中国からの渡来人にまつわるものだ。料理研究家の柳谷晃子氏が、懐かしのおやつの一つ「まんじゅう」を紹介する。
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私たちが今でもよく食べているまんじゅうの起源には、主に二つの説があります。
まず一つめ。鎌倉時代に栄西禅師が臨済宗を伝え、僧が中国と往来するようになったことがきっかけで、「点心」の食習慣が日本に伝わったと言われています。
点心とは「間食」のことで、杏仁豆腐やマンゴープリンなどの「羹(かん)」、麺類、饅頭類、餃子や焼売、小龍包といった小麦粉の薄い皮で包むもの、ご飯もの、餅類などが含まれます。
例えば、鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』に登場する「十字」という言葉は饅頭のことだと考えられていますが、これは中国で蒸し餅の上に十文字形に切れ目を入れていたことに由来するようです。
まんじゅうの起源にかかわる二つめの説は、1349年に中国の林浄因という人が饅頭を伝えたというものです。僧侶に随行して来日した林さんは、肉食が禁じられている僧侶のために小豆を煮詰め、砂糖の代わりに甘葛の煎じ汁をからめたものを、皮に包んで蒸して売ったと伝えられています。現在の酒まんじゅうのドーム形は、当時の形がそのまま継承されているようです。
林さんは小麦粉に天然酵母菌を練り込み、発酵させた生地を混ぜて、ふっくらした皮を作っていたといいます。この手法は「老麺(ろうめん)法」とよばれ、一部の中国料理店に受け継がれています。現代ではイーストを使うのが一般的ですが、古人の知恵にはいつも驚かされます。
※週刊朝日 2013年2月15日号