自らの名を冠するチョコレートは、世界中のカカオ豆の仕入れルート開拓から、完成品のショコラを作るまですべて自分で行う。ピエール・マルコリーニが他のショコラティエと一線を画す理由のひとつだ。文献もない。学校もない。頼れるのはチョコレートへの情熱だけという孤独な闘いの中、納得のいくものを作るのに10年以上かかったという。
職人気質を絵に描いたようなエピソードから、どれだけ気難しい人が現れるのかと緊張したのもつかの間。アエラの表紙撮影のためにスタジオに到着したピエールは、とろけそうな笑顔で挨拶を返してくれた。包容力を感じさせる長身のがっしりとした体形に、甘く鋭い目。彼の作る繊細なチョコレートそのもののよう。
昔から日本通で、こう語る。
「山椒のかかったウナギが大好き。日本食で苦手なものは今まで一つもなかったんだ。日本の文学作品もよくチェックしていて、最近は『1Q84』を読んだよ」
目前に迫るバレンタインデー。彼のチョコレートをプレゼントにしたいと、店舗には毎年たくさんの女性が詰めかける。
こっそり聞いた。教えて、意中の彼のハートを射止めるポイントは?
「おいしい料理やお菓子を作って、胃袋をつかむことが一番さ」
古今東西、男性のツボは同じなのかもしれない。
※AERA 2013年2月11日号