ペン回しをする、ひたすら髪の毛を触る、貧乏ゆすりをする、電話をガチャンと切る…。職場にはいろんな癖を持つ人がいるが、どうしてなのか。対人心理が専門の立正大学の齊藤勇教授は言う。
「髪をいじったり、貧乏ゆすりをしたりしてイライラやモヤモヤが軽減する体験をすると、人は無意識のうちにそれをストレスや不安の解消法として学習してしまう。しかも、迷惑をかけていることを自覚していないことがほとんどで、なかなかやめられなくなってしまうのです」
『その癖、嫌われます』の著書がある演出家で、宝塚大学の竹内一郎教授は、大物政治家や企業経営者などエグゼクティブに対し、話し方やふるまい方の個人レッスンも手がけてきた。そこで気づいたのは、大物になるほど他人に不快感を与える癖が直っているということだった。
「自分の癖に無頓着な人は、周囲の目に無頓着な人と言い換えてもいい。変な癖を持っている人は出世できないと言っても過言ではないと思います」(竹内教授)
都内のメーカーに勤務する女性(27)の上司も、そんな例のひとつかもしれない。40代の男性が最近、ヘッドハンティングされてやってきたのだが、彼の癖に周囲は毎日イライラしているという。
「自分のデスクと会議室の移動中や打ち合わせ中など、いつでもボールペンをカチカチとノックしていて、その音を聞くたびにムカムカしてくるんです」
彼はいつも落ち着きがないばかりか、最近入社したばかりなのに仕事の進め方があまりに自己中心的で、同格以上の人も含め、職場の人から疎まれていると、女性は訴えた。
スポーツ選手やビジネスパーソンなどのメンタルトレーニングを手がけるリコレクト代表の森川陽太郎さんはこう話す。
「変な癖は、仕事に不安があったり自信が持てなかったりすることのサインでもあります。それを逆手にとると、癖が出ているときは不安なときだと気づくことができるのです」
※AERA 2013年2月18日号