3分間を終えて感じたのは、1回目より集中し、気持ちの切り替えがうまくいったようだということだ。

 マインドフルネスによって、心理的ストレスの低減や作業効率の上昇、免疫機能の向上などが期待できるという。その理由はどこにあるのか。

『高齢者のマインドフルネス認知療法』の共編著があり、米ミシガン大の老年医学センターでソーシャルワーカーを務めるフォーク阿部まり子さんが解説する。

「元はお釈迦様が教えられていたもので、2500年前から伝わる原始仏教が由来です。その教えは漢語では『念』。文字からもわかるとおり、“今の心”に気づくことをマインドフルネスと言います」

 念の教えが西洋に渡った際に、宗教を離れてヘルスケアに役立つように応用されたのがマインドフルネスだ。1970年代に米国の研究者によって開発された。

「医学ではどうにもできないような疼痛(とうつう)などの慢性疾患を対象として始まったトレーニングが、今のマインドフルネスの広がりのきっかけです。一般の人たちに広く知られるようになってきたのは、ここ10年ほどのことです」

 契機になったのは、2007年に巨大IT企業の米グーグル社が企業研修に導入したことだ。社内には専用の瞑想室が設けられ、社員に人気だという。阿部さんによれば、米国では州によって、学校教育の中でマインドフルスクールとして教えるところもあるうえ、高齢者にも人気が高いという。

「自分の心の状態に気づくというのは、うつや不安症の予防にも役立ちます。私は主に高齢者を対象にカウンセリングをしていますが、この10年くらいで心理療法として使うようになりました。エビデンス(根拠)に基づいた科学的研究が多く発表されていて、高血圧、摂食障害にも効果があります。精神科医からの依頼も増えていて、需要の高まりを感じています」

“今の心に気づく”とは具体的にどういうことなのか。マインドフルネスに詳しい琉球大学の伊藤義徳教授が説明する。

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