人口約1千万人の同国でこの時点での死者は約6千人。日本などアジア諸国だけでなく欧州諸国と比較しても死亡率は低くなかったが、これについてテグネル氏は高齢者施設の運営方法が背景にあったと説明した。
「感染者が入所したことで被害が拡大したが、これを機に改善しました。ケアの質が足りないのではないかという批判が以前からあり、その弱みがコロナ発生で明るみに出たイメージです」
同国の介護施設に入所する高齢者は約7万人で、春先の感染拡大期にクラスターが発生し、3千人以上が亡くなった。これについて同国の大学病院で働く日本人医師が日本医師会の有識者会議に寄稿した「スウェーデンの対新型コロナウイルス政策」の中でこう記している。
「介護施設の入居者はもともと予後の短い重症者が多いという背景から、介護施設での感染者の多くは病院へ搬送されることがなく、感染者の約30%が亡くなった。予後の短い重症の高齢者の死亡が数カ月前倒しになったとする見方もある」
従来、介護施設には医師も常駐しておらず、看護師も少ないなど医療との連携不足が指摘されていた。同国が取り組んだのはその距離感の解消であり、テグネル氏によれば現在1日に数人程度にまで減ったコロナによる死者のうち、介護施設由来は皆無になったという。
ロックダウンを採用しなかった同国は積極的に集団免疫を目指していると誤解された向きもあったが、50人以上の集会や介護施設への訪問を禁止したり、職場でのリモートワークを勧めたりと、緩やかな制限で感染の拡大をコントロールしてきた。
秋から欧州各地で急拡大した感染が同国にも広がり、週平均の新規感染者が4千人を超えた11月中旬には、ロベーン首相が集会の人数制限を50人から8人までと厳格化した。そしてテグネル氏も会見で、集団免疫について「ワクチンなしで獲得できるとは思っていない」と述べた。(編集部・大平誠)
※AERA 2020年12月21日号より抜粋