――そこで、お金のトラブルという、俗っぽい事柄に焦点が当たった。言葉は適切ではないかもしれませんが、ある意味で人間のだらしなさを象徴するような問題が出てきたわけですね。しかも、国民の目には、問題が解決しないまま、長引いているように映っている。
河西:そうです。それまで皇室に対して国民の支持が高かったからこそ、ショックが大きかったのです。反作用のようなものですね。国家と国民を統合するという象徴天皇制が非常にうまく機能していたゆえに、なおさら、この問題で「われわれのすばらしい存在を傷つけられた」という気持ちになってしまったのでしょう。
――秋篠宮家の問題ということも影響しているのでしょうか。
河西:秋篠宮家の長女眞子さまに対しても、次女の佳子さまに対しても、国民は親しみを抱いていました。眞子さまは一時期ネットでキャラクター化されていましたし、佳子さまは「かわいすぎるプリンセス」として注目されるなどして話題になりました。
国民は、本来皇室は遠いものとわかっていながらも、秋篠宮家はどこか自分たちと近い存在としてとらえていたのでしょう。近くて遠い理想的な家庭と思っていたからこそ、今回の問題を残念に感じているのかもしれません。
――「結婚は生きていくために必要な選択」という眞子さまのお気持ちに対しても、理解できないという声が上がっています。ただ、皇室の方々といえども、生身の人間です。その言動すべてに、国民が納得・理解できるかというと疑問です。今回の問題に限らず、生身の人間である限り、国民と意見や心情が一致しない場合もあると思うのですが。
河西:もちろんずれることもあります。平成の終わりは、たまたま、天皇・皇后両陛下の姿に幅広い国民が自分たちの思いを重ね、双方が一致していた状態だったともいえます。
ふりかえれば、平成でも美智子さまに「皇后バッシング」が起きたことがありました。いわれなき非難が多数だったにせよ、これは、国民と皇室の間である種のずれが生じていたとも捉えることができます。その結末は、59歳の誕生日に美智子さまは突然倒れ、声を失うという事態でした。