対談のあと、近くのホテルで中国料理を食い、なぜかしらん麻雀をしようということになった。雀荘は早くに閉まるから、都内の独身編集者の自宅マンションに移動し、マスクをしたまま三人で卓を囲む(このあたり、元東京高検検事長の事例と似ていなくもない。レートは低いし、牌は手積みだが、久々の手積みは懐かしかった)。
東京の麻雀は四人打ちが普通だが、わたしはサンマーしかしない。ちなみに、いまどきの麻雀は東京以北が四人打ち。大阪以西の中国、四国、九州はサンマーが主流で、メンバーが四人いても三人で打つ。荘家(オヤ)が代わるごとにひとりが抜けるから(連荘[レンチャン]がなければ)四回に一回は休憩できる。
「ね、ギンナンて好き?」「食べませんね」「あ、そう……」話を振ったが、誰ものってこなかった。
戦いは朝の八時に終わった。結果はわたしのひとり負け。よれよれのへろへろでタクシーに乗り、起こされたのは東京駅の日本橋口だった。みどりの窓口で、広島止めはパス、二十分あとの新大阪止めに乗車し、目覚めたときは新大阪駅にいた。
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号