見守りロボットを活用する自治体もある。NECの「パペロ」を導入するのは静岡県藤枝市だ。簡単な会話ができるロボットで、家族がスマホでメッセージを入力すると読み上げる。カメラで1日3回、決まった時間に写真を撮って家族に送る。
同市は65歳以上の単身者か要介護・要支援者の世帯を対象に20年10月から提供している。利用料金は、Wi-Fi(ワイファイ)環境があれば月700円(税込み)、なければ月1580円(同)だ。
ただ、7~9月の実証実験に参加した14人のうち、5人が利用をやめた。
「家族と本人の両方がロボットにいいイメージを持っていると続きますが、家族だけの意見で導入しても本人が使うつもりがなければ、長く続きません」(市担当者)
これはロボットだけの問題ではない。ウェアラブル(装着型)環境情報ネット推進機構の板生清理事長は指摘する。
「人に監視されたり、何か手伝ってもらったりするのは、自尊心の強い高齢者にとってうれしいことではありません」
みずほ情報総研チーフコンサルタントの羽田圭子さんは、こうアドバイスする。
「親の『気持ち』も見守ってあげましょう。近所や知り合いの例を紹介したり、自治体など第三者に勧められたと柔らかく話してみたりするのも有効です」
ほかにも課題はある。野村総合研究所コンサルタントの郭日恒さんは、こう話す。
「山間部では電波の通信がよくないことがあります。また、見守る人が離れていると、見守られている人が転倒してもリアルタイムで対応できるかどうか」
センサーがついた機器の場合、ペットが通ったりカーテンが動いたりして誤作動するかもしれない。その場合も誰かが駆け付ける必要がある。
近所の人に家の鍵を預けるのが難しければ、羽田さんは、遠隔地からスマホで家の鍵の解除ができる「スマートロック」を勧める。
また、機器システムの契約者を家族にしておけば、親の認知機能が低下しても契約の追加や解約などがしやすいという。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号