また、前京都府知事・元全国知事会長で、中央教育審議会臨時委員でもある山田啓二さんは言う。

「地方私大の合併・再編に向けた動きは始まっている」

 文科省は昨年10月、「地域連携プラットフォーム構築に関するガイドライン」を発表した。このプラットフォームは各地域で大学や自治体、産業界などが課題などに関して対話をする場だが、地域の現状に即した大学の再編、統合なども検討課題になると見られている。こうした取り組みを経て、各地の私大同士の連携が深まり、合併・再編に向けた動きも進んでいきそうだ。

「合併・再編ありきではなく、地域がビジョンを描いて、高等教育をどうするべきか考えていく必要がある。その中で私大同士の連携、学部の再編、さらには合併という選択肢も出てくる」(山田さん)

 京都府立大と京都府立医科大の合併・連携の仕方にも山田さんは注目する。両大学とも歴史があり、その独自性が失われる懸念があったが、新しく学校法人をつくり、そこに2大学を残すことで統合を果たした。さらに国立の京都工芸繊維大と連携し、教養教育の共同化を実現した。京都市に本社を置く京セラの稲盛和夫名誉会長から20億円の寄付などを受け、施設を建設した。

「それぞれの大学の良さを残しながら、多様な学生が集まり、ないものを補い合いながら学ぶことができている。この合併・連携のあり方は私大でもあり得る。ただ、地方では合併に伴う資金が足りない可能性がある。強い大学同士が合併するだけでは、格差が広がるばかりだ。政府は補助金をつけるなど地方私大の取り組みを支援する必要がある」

 学生にとっていかにいい学びの場を残し、発展させられるか。国にも大学にも戦略が求められている。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年1月15日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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