私大の経営状況を調査する日本私立学校振興・共済事業団によると、全国593校のうち、入学定員を満たしていない大学は184校(31%)にも上る。赤字になっている大学も多い。
「今後、私大の合併は出てくる」
こう語るのは、大学経営コンサルタントで大学選びにも精通する加藤雄次さんだ。
「新たに学部をつくるとなると費用や時間、労力もかかるため、合併が経営力を強化するための効率的な手段となる。まずは大規模有力大学やオーナー系大学など組織力や決断力のある私大による合併が先行するのではないか」
それでは具体的にどんな合併が可能性としてあるのか。予想ではあるが、大学関係者や専門家にシミュレーションをしてもらった。
共通して指摘があったのは、単科大と総合大との合併だ。
早稲田大だけではなく、明治大、中央大など東京の有力な総合私大には医療系学部を持っていないところが多い。関西も同様で、同志社大、関西学院大、関西大にはない。一方で、近隣には医療系の単科大がある。
合併に向けて重要になるのが、教育連携や共通項の有無だ。
例えば、明治大と順天堂大は15年に大学間交流に関する包括協定を結んでいる。立地も近くて連携がしやすく、合併に発展する素地がある。
上智大は11年に看護学部を持つ聖母大と合併し、14年には聖マリアンナ医科大と大学間交流の包括連携協定を締結している。いずれの大学もキリスト教カトリックの精神を持っており、「合併も視野に入れているのでは」という見方もある。
かつて立教大と看護系の学校を持つ聖路加国際病院との合併の話もあった。立教大と聖路加国際病院は米国聖公会の宣教師によって創設されており、戦時下と戦後に、合併し立教大に医学部を設置する動きがあった。同大の理学部は医学部設置に向けた前段階として作られた経緯がある。
武蔵野美術大と多摩美術大も、実は同じ一つの大学だったという歴史がある。帝国美術学校として創設され、1935年に分裂している。美大の早慶と言われる両大学が合併すれば、美術系では東京芸術大にも匹敵するという期待もある。