「主人公に関する展開以外は興味がないので、それ以外のシーンは早送りしながら見ました。話の流れについていけなくなった時は巻き戻したりしています」(女性)

「愛の不時着」は全16話、短くて70分、長いもので112分とエピソードごとに尺のばらつきがある。だが、女性は1話あたり平均「60分くらい」で見終えたという。

 他の韓国ドラマも押さえているが、夢中になれないものは複数ドラマを並行して観る“ちゃんぽん”をすることもある。

 そんな視聴スタイルの女性が、早送りも倍速もせずに見ているシリーズが、U−NEXTで配信されている「ウェブドラマ」だという。

「韓国で流行(はや)っている1話15分くらいのドラマです。短いしテンポよく作られているので、早送りしなくてすむんです」

■文脈づくりが重要

 いまや尺の短さは、視聴者が負担なく快適に視聴を続けられるかどうかの重要な指標だ。

 昨今、TikTokやインスタグラムの「Reels」、YouTubeの「Shorts」など、短尺動画のプラットフォームが相次いで登場している。

 電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬さんは、ショートビデオの盛り上がりに注目する。

「TikTokの競争力の源泉は、コンテンツマッチングのアルゴリズムの精度にあります。短尺だからこそ、ユーザーが面白いと思うかどうかを大量に機械学習できて、どんどん精度が向上していきます」

 では、映像コンテンツがあふれるなかで、長尺の映像作品は衰退していってしまうのか。映画は過去の遺物になってしまうのか。

 同ラボのメディアイノベーション研究部長の美和晃さんは、空前のヒットとなった映画「鬼滅の刃」を例に挙げ、説明する。

「『鬼滅』は長尺作品でしたが、若年層も夢中になって楽しみました。長尺でも作品としての魅力や社会的なブームという後押しがあれば、若者も映像を受け入れる素地はあります」

 公開にあわせてアニメ放送の特別総集編を流すなど工夫も凝らした。美和さんは言う。

「さまざまなメディアで準備を整えて初めて2時間見てもらえる場所にたどり着いた。現代は、長時間動画を受け入れられる文脈を作ることが重要です」

(編集部・福井しほ)

AERA 2021年1月18日号より抜粋

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