新型コロナウイルスの感染爆発による医療崩壊が差し迫っている。その渦中、東京都では、都立広尾病院など3病院が“コロナ専門病院”として始動する。他の都立・公社病院でも通常医療を縮小し、病床を確保する。崩壊は止まるのか。
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ある都立病院の内科医が、院内の実情を語ってくれた。
「コロナ治療にあたる医師スタッフは、呼吸器や循環器、消化器など集中治療ができる診療科が中心となり、一般外科などは応援として補われる予定です。看護師も多く必要となるため、一般病床の一部を閉鎖してあてがう形になります」
通常の診療は減らし、新規の入院は制限していくことになるという。
「緊急性のある疾患の治療や入院が必要な患者さんは他の病院に依頼することになります。一方、緊急を要しない治療であれば、患者さんには、治療再開を待っていただくか、他院を紹介することになると思います」
だが、大都市を中心に感染者の爆発的な増加は収まりそうになく、病床の逼迫に拍車がかかる。都がコロナ患者向けに用意したベッド数は4千床だが、1月15日時点で入院患者数は3020人。およそ8割が埋まっている状況にある。14日に開かれた、都内の病床数などの警戒レベルを判断するモニタリング会議では、専門家から、医療提供体制が破綻(はたん)の危機にあるとの見解が出た。
小池百合子知事は15日に記者会見を開き、都立・公社14病院をコロナ拠点病院とし、現在の計1100床から計1700床に増やすと発表。
都立広尾病院、公社豊島病院、公社荏原病院の3医療機関は実質的に「コロナ専門病院」とし、広尾はコロナ患者以外の新規外来や入院の受け入れを休止。豊島と荏原は産婦人科と精神科の救急以外はすべての入院や診療を取りやめる。
他の都立・公社病院でも通常の病床を一部閉鎖し、コロナ病床に切り替えて運用していく。これで病床の逼迫(ひっぱく)は食い止められるのか──。前出の内科医は厳しい見方だ。