コロナを重点的に診る病院と、その他の疾患の救急患者を引き受ける病院との役割分担が必要だと訴える。

「心疾患や脳卒中の人が救急医療を受けられないような状況こそ、最も回避すべき医療崩壊です」

■重症者ベッドが欧米より少ない

 一方、コロナ患者を重点的に受け入れていく都立・公社病院だが、気になるのは重症患者用のベッド数だ。広尾は12床、豊島と荏原が5床ずつ。最も多い都立多摩総合医療センターでも21床だ。都の重症者数は15日現在133人で、今後も増加する可能性があることから、十分なベッド数とはいえないだろう。

 医療制度研究会副理事長の本田宏医師はこう指摘する。

「感染症の専門医も、集中治療の専門医も日本は非常に少ないのです。また、重症者用のICU(集中治療用)ベッドも少ない。ですから、欧米と比べて患者数がずっと少なくても、すぐに医療が逼迫するのです」

 本田医師によれば、人口10万人あたりのICUベッド数は、米国34.7床、ドイツ29.2床、韓国10.6床に対し、日本は7.3床しかない。重症患者に使用される体外式膜型人工肺(ECMО)は専門性が高く、1人の重症患者に何人もの医療スタッフが必要になる。

「厚労省はこの間、診療報酬を低く抑えて民間病院の経営を圧迫し、その一方で公立病院を減らそうとしています。そのツケがいま国民に回っているのです」(本田医師)

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう語る。

「都立・公社病院のコロナ拠点病院化は、非常に大きな一歩です。しかし、医師数が少ないので、重症者用のベッドがつくれないのです。いま機能していない戦艦大和があります。それは、東京大学医学部付属病院です」

 今回、重点病院になった3病院の医師数は計417人だが、東大病院は約1300人もいる。

「なぜ、東大病院がコロナ拠点病院に手を挙げないのか不思議です。東大病院は文部科学省の管轄ですから、厚労省も都知事も要請できない。いますぐにでも総理がやるべきことです」(上医師)

 菅義偉首相は新型コロナとの闘いを「国難」と呼んだのだから、本腰を入れたらどうか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2021年1月29日号