年間に発症する患者数が2000~2500人という小児がん。成人のがん60万人に比べるとまれな病気だが、その種類は多く、小児の死亡原因では、不慮の事故、先天性の病気に次ぐ第3位。2013年2月には、小児がん拠点病院が全国で15施設指定され、集約化などの整備が始まっている。
大阪府在住の中学生、三沢亜美さん(仮名・14歳)は、6歳のとき、体調がすぐれず、発熱が長引いたため、近所の小児科を受診した。血液検査をしたところ、白血病の疑いがあると言われた。白血病は、小児がんのなかでも多い疾患で、約40%を占める。さっそく大阪府立母子保健総合医療センターを紹介され、精密検査を受けると、慢性骨髄性白血病と診断された。
イマチニブ(商品名グリベック)を使った薬物治療の継続により、亜美さんの病状は、その後、約4年間良好に推移し、症状が落ち着いて安定した状態である「寛解」を維持していた。ところが徐々に身長が伸びなくなり、10歳のころにはクラスでいちばん背が低くなってしまった。11歳のときの検査では、7歳程度の骨密度しかない状態であることが判明した。さらに、免疫力に関与する「ガンマグロブリン」も低い値となっていた。
「薬物治療をやめて経過を観察したところ、身長の伸びは回復したのですが、白血病が再発してしまいました。そこで、12歳のときに骨髄非破壊的移植(ミニ移植)を実施することにしました」(大阪府立母子保健総合医療センター 血液・腫瘍科の井上雅美医師)。
ミニ移植とは、従来の骨髄移植とは違い、移植前処置をひかえめにし、すべてを破壊しない移植法だ。強力に患者自身の免疫を抑制する薬を使い、移植された細胞を拒絶しようとする患者の免疫システムを抑え込み、移植細胞の生着を確実にする。抗白血病効果を移植前処置に頼るというより、生着したドナー(造血幹細胞提供者)からの免疫担当細胞が患者の白血病細胞をたたくことに期待するのだ。うまくいけば白血病細胞への治療効果が得られるだけでなく、治療後に出るさまざまな晩期合併症を軽減できる。
※週刊朝日 2013年4月5日号