春になると多くの人が悩まされるのが、花粉症。生物学者で早稲田大学教授の池田清彦氏はこんな提言をする。

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 今年はことのほかスギ花粉が多かったようだ。花粉症に悩まされている人はまことにお気の毒で、花見のシーズンだというのに外出もままならないみたいだ。おまけに中国からは黄砂もPM2.5も飛来して踏んだり蹴ったりである。私が子供の頃は花粉症など聞いたこともなかった。スギの花粉は今ほど飛んでいなかったにせよ、飛んでいなかったはずはないから、複合的な原因があるにしても、スギが究極の原因であることは間違いない。戦後、補助金を出して広葉樹を切ってスギ林を作ってきた農水省に少しは反省してもらいたいと思うが、国のやることは無謬(むびゅう)なわけで(国の無謬とは間違いを絶対認めないという意味だけれどね)、スギ林を伐採しようという話にはならずに、未だにスギを植林している所もあるようだ。

 スギの花粉のタンパク質を人工的に組み込んだ「遺伝子組み換え米」を開発して、食べ続けることでアレルギーを緩和する、いわゆる減感作療法に農水省が税金を注ぎ込むという話もあるようだが、マッチポンプのようなことはやめてもらいたい。減感作療法は効果のある人もいれば、全くダメな人もいて、根治療法にはならないからだ。

 はっきりしているのは、スギを全部伐採してしまえば、スギ花粉症はなくなることだ。スギ花粉症は全国の患者数が2000万人を超えるという国民病であり、原因もはっきりしているのだから、国はこの原因を除去する義務がある。スギはC02の吸収率が良く、温暖化抑制に効果があるなどとゴミのような理屈を言っている向きもあるやに聞くが、スギを植えておくことによるメリットと、スギを全部伐採して花粉症がなくなるメリットを比較すれば、後者の方が明らかに大きい。花粉症の治療費は年に3000億円に達するという。スギを植えておいても3000億円は儲からないだろう。

 花粉症で儲かるのは製薬会社と耳鼻咽喉科の病院だ。まさか、この二つの利権のためにスギを切らないわけではないよね。次の参議院選の候補者には、スギ伐採法を議員立法するとの公約を掲げることを奨めたい。花粉症の患者は投票すると思うよ、私は花粉症じゃないけどね。

週刊朝日 2013年4月19日号