角度43度――。この数字にピンときた人はおそらく“トイレ通”だろう。そう、ウォシュレットの洗浄水の噴射角度だ。
TOTOが温水洗浄便座「ウォシュレット」を販売開始したのは、1980年のこと。いまでは累計出荷台数が3千万台を突破。温水洗浄便座の普及率は一般家庭で7割を超えた(内閣府調べ)。海外での評価もうなぎ登りで、中国では「メルセデスと肩を並べる」と評されるほどの高級品だ。
「清潔大国」日本の象徴ともなった洗浄便座。先日、仮釈放されたホリエモンこと堀江貴文さんも、ツイッターで「久しぶりにウォシュレット。やっぱり気持ちいいな」と、歓喜のツイートをするほどだ。この噴射角度の効果は後述するとして、清潔文化が成熟したことを示す、ある現象も起きている。
家まで我慢する
ぱっと見、俳優の向井理に似た甘いマスク。
都内のアパレルメーカーに勤務する男性(28)は、柔和な眼差しに口角が上がったモテ顔で、おもむろにこう話した。
「自宅以外のトイレでウンコするのは厳しいですねえ」
外出先でトイレに入るのが、めっぽう苦手。勤務先の会社のトイレもほとんど使ったことがない。昔から便秘気味の体質で、「2週間くらい出ないこともあった」というが、仮に便意をもよおすことがあっても出先のトイレは使わない。
「他人が使った雰囲気が残っているだけで、もうイヤですね。公共のトイレでウォシュレットを使うなんて考えたこともありません」
決して潔癖ではない。自宅の部屋は仕事柄、服で散らかっている。汚い部屋でも、さほど苦にならない。自宅のトイレも常にキレイに掃除しているわけではない。他人と同じトイレを使うことに抵抗があるのだ。
よく服を買いに行く東京・原宿では、滞在時間が長くなることも考えて、事前に“入れる”トイレに目星をつけている。マイトイレは「裏原宿」の穴場にある。友人から「よく知ってるな」と感心されたことも。
「駅やコンビニのトイレは絶対に使えません。駅のトイレで行列をつくってまで入るくらいなら、家まで我慢します」