山口:たぶん私たちが学力試験で勝ってきた後だから。受験生なら違う考え方をするかもしれない。

上野:いまの入試は、中高一貫の男子進学校が合格するためのノウハウを蓄えていて有利。そのルートだと入りやすい。女子を増やすために大胆に選抜方式を変えるのはどうだろう。いま、東大の推薦入学者の半数近くが女性です。ところが一般選抜の募集枠が約3千人なのに対し、推薦枠は100人しかないから焼け石に水。だから推薦枠を募集定員の3分の1まで増やしたらどうだろうか。学内カルチャーが変わるし、結果として女性比率が増えると思う。

山口:学力選抜という平等な競争が一番公平と思っていたけど、高校での平常点とかじゃなくて、一回きりの試験で能力を問うその物差し自体が、もしかしたら男性的なモデルなのかもしれない。本当は物差しが不公平かもしれないことを考えてこなかった。大胆さを持って変えてもいいですね。

上野:女子を増やすことの意味に学内コンセンサスがないのも問題。大学で教えるのは知識ではなく、新しい知識を生み出すメタ知識なんです。そのためには学習環境が同質的ではダメ。異文化度が高い人たちが多いほど新しい知識が生まれる。イノベーションの基本です。

神谷:東大女子を思い切って増やすことは大切なことだと思います。

上野:東大も口先では色々と言っているけど、どこまで本気なのかわからない。山口さんや神谷さんには東大女子のロールモデルになってほしいな。(構成/本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年3月5日号